今回は、薬学生の職業選択の意識と実際の卒後の多様な選択肢についてお話します。
定番職業以外想像できない?
4年制・6年制問わず、薬学部にいると自覚もなく、卒後の進路は病院、薬局、ドラッグストア、製薬メーカーの4択のうちどれにしようかなという考えになります。世の中にはたくさんの職業があるのに、あたかもこの4択の中から選ばなければならない錯覚に陥ります。
とある薬学部の1年生に、定番の職業以外に、たとえばコンサルティング会社やWEBマーケティング会社、ヘルスケアベンチャーといった多様な選択肢があることを知っていますか?と職業選択の多様性について聞いてみました。するとこんな結果になりました。
まだ1年生なので、定番の職業が刷り込まれていないと思いますが、同時に薬学部を卒業して薬剤師免許を使わない職業についてもイメージできていないという結果でした。
まぁまだ18歳ではどんな職業があるかわからなくて当然なのかもしれません。
どんな選択肢が存在するか?
定番の職業以外に薬学部出身者が選択しうる職業ってどんなものがあるでしょうか。
僕のビジネスパートナー、取引先、大学の教え子、知人・友人の実例を列挙してみます。
薬剤師免許は使わない(一部使う)けど、薬学領域に関係する職業としては、
医薬品卸、介護、化粧品・食品・化学系メーカー、原薬メーカー、調剤機器メーカー、IT、臨床試験、臨床開発、出版社、メディア、Webマーケティング、ライター、コンサルティング、大学教員、研修講師、事業承継・M&Aがあります。
新たに別の資格や免許を取得し、そっちを生かした職業に就いた例では、
公務員、弁護士、ケアマネジャー、臨床検査技師、海外の薬剤師の方もいます。
薬学とはかなり無縁な職業に就いた例としては、
ミュージシャン、モデル、バーテンダー、アイドルもいます。
余談ですが・・・。
ミュージシャンといえば”ケツメイシ”が有名ですね。ちなみに僕の大学の同期です。
バーテンダーは、都内にある老舗有名Barのオーナーバーテンダー渡〇氏。バー業界の重鎮です。この方は東京薬科大学薬学部を中退して、バーテンダーの道へ進まれました。ご本人曰く、学費を稼ぐためのバイトで始めたのだが、そっちに夢中になってしまったとのこと(僕がBar好きなもので、つい余談を)。
さて本題に戻って。
上記では実際に僕が知っているケースをご紹介しましたが、当然他にもいっぱいあると思います。薬剤師以外に取得した資格を生かすケースや仕事を通して獲得されたスキルを生かして別業界に就くケースは無数にありえます。
薬剤師経験を積んでから転職したほうがいい?
僕が学生さんから就活の相談を受けるときに、よくこの質問が飛び出ます。
「私は薬剤師にあまり興味がないので、免許を使わない職業を選ぼうと思うのですが、とはいえ一度は薬剤師経験を積んでから、転職したほうがいいですか?」と。
そして僕は必ずこう答えます。
「やりたいと思った時が旬だよ。その旬な気持ちを大事にしな。」と。
新卒でコンサルティング会社に就職した教え子がいますが、彼女もこの問いに悩んでいました。
チェーン薬局企業やチェーンドラッグストア企業を顧客とするコンサルティング会社が増えてきたので、自社で薬剤師社員を採用することがあります。そんなコンサルティング会社を狙う場合、一度薬局などに勤務し、薬剤師業務経験を強みにして転職する方が有利なのではないかという考えも一理あります。当然そういう選択もありです。
しかし一方で、コンサルタントとしての経験を早くから積むことも大事です。もし薬剤師業務経験が乏しいことを悩むなら、土曜日に薬局でパート勤務するとか、薬局に就職した同級生に話を聞くとか、経験を補う方法はあります。
そして何よりも大事なのは、「その仕事をしたい!」と思った時にチャレンジすることです。
すなわち”旬”を大事にするということです。
長期的な視点からキャリアデザインを戦略的に描いて、最終的になりたい職業に就くための手段として、その手前の職業選択をするという考え方もありなのですが、若いうちはまずはやりたいと思った仕事に飛び込んでみるのがいいと僕は考えています。
そして国家資格があるんですから、冒険もしやすいし。
ということで、薬学生さんのみならず薬剤師さんにおいても、もっと自由に、多様な職業を選択してもいいのではないでしょうか?やりたいと思った時の旬の気持ちを大事にしてみてはいかがでしょうか?