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薬剤師のキャリアにエッジを立たせる

兼業副業は、薬剤師側も会社側も他人事ではない!~Part1:兼業副業の定義、企業側の実態、働く側の意識

一人一つの仕事に就くという概念や月曜日から金曜日までの週40時間が仕事時間=お金を稼げる時間という概念は多くの人の常識となっているかもしれませんが、もしかしたらそれは昔の考え方と笑われてしまうかもしれません。

働き方というものをもっと自由に捉える、そうです「働き方改革」です。最近、「兼業副業」という言葉をよく耳にしますね。今回は、その兼業副業について一般論から具体的なHow toまで掘り下げてみたいと思います。薬剤師でない方にもそこそこお役に立てる内容になっているかと思います。

ちょっとボリュームがあるので、2回に分けてお伝えします。
Part1:兼業副業の定義、企業側の実態、働く側の意識
Part2:兼業副業の探し方、今後の行方、目的

こんにちは、P-Edgeの富澤です。僕は、兼業副業大賛成派です。まぁ、サラリーマンを辞めて起業して、自由に働いているわけですから、賛成派を標榜するのは当然かもしれませんが。
ではまず始めに兼業副業の定義から見ていきましょう。

兼業副業の定義

兼業も副業も2つ以上の仕事に従事していることをいうわけですが、どちらも定義や法律もなく、言葉の意味としても明確な違いがありません。
仮にXさんが、A職とB職という2つの仕事に就いているとしましょう。兼業と副業は以下の観点からなんとなく違うものとして捉えられています。

  • 労働時間の違い:A職とB職の働く時間数
  • 労働機会の違い:A職とB職に従事する曜日や時間帯
  • 収入の違い:A職とB職から得る収入の割合
  • 雇用形態の違い:A職とB職での雇われ方

【兼業の場合】

  • どちらも同じくらいの時間数か、またはどちらかが少し短い時間数で働いている。
  • どちらも平日の週40時間の範囲内で掛け持ちする。
  • どちらも同じくらいの収入か、またはどちらかが少し少ない。
  • どちらも正社員、どちらもパート、どちらも自営業など。

 【副業の場合】

  • どちらかが明らかに短い。
  • どちらかが週40時間外(平日の夜間、土日)で働く。
  • どちらかが明らかに少ない。
  • A職が正社員で、B職がアルバイトなど。

 といったイメージを持たれている人が多いと思いますが、あくまでイメージです。
これらの境界線はあやふやです。たとえばA職をメインで働いていて、あきらかにB職の労働時間は少ないけど、B職の収入が多い場合、兼業なのか副業なのか区分しにくいですよね。週末にブログを書いてアフィリエイト収入で主たる仕事の給料を上回るといったケースですね。
その人の働く時間や得られる収入という観点で、兼業と副業を分けることは実際には難しいのですし、そもそも分けて使う意義を感じません、したがって「兼業副業」という一つの言葉として使った方がいいでしょう。また、「マルチジョブホルダー」「パラレルキャリア」「サイドビジネス」「ダブルワーク」といった言葉も使われますが、まぁここでは言葉の紹介だけに留めます。ちなみに行政の方では「副業・兼業」という表記が使われています。

企業側の実態

株式会社リクルートキャリアが約2,000社にWebアンケートを実施したところ、兼業副業を禁止している企業は約7割とのこと。う~んまだまだ浸透していないんですねぇ。禁止する理由としては、従業員の長時間労働・過重労働を助長するためとのこと。

 【参考】株式会社リクルートキャリア:プレスリリース「兼業・副業に対する企業の意識調査(2018)」

たしかに、本来休養にあてる時間に労働するわけですから、従業員の体調管理や疲労は気になりますし、それによって本来業務のパフォーマンスが下がるようなことがあっては困ります。また、長時間労働によって体調を崩した場合、本業側と兼業副業側のどちらの安全配慮義務、健康配慮義務が問われるのかわかりにくいという問題もあります。他にも情報漏洩、労災認定、人材流出などの心配も当然といえば当然です。

 私が勤務していた会社でも、時代の流れを受けて兼業副業を認めるかという議論が出たことがありました。その際に誰もが答えられなかった疑問がありました。「そもそも就業規則上、なんで兼業副業が禁止になっているんだっけ?」そして「いや、禁止と明確に謳っているわけではないんじゃないか?」という疑問です。そうなんです、人事担当者でさえ自社のルールがわかっていなかったのです。会社の就業規則の服務規定には、「会社の命令または許可を受けないで、他の職場に従事したり、または他の労務・公務に服したりしてはならない。」といった表現がなされていることが多いと思いますが、会社の許可手続きが制度化されていなかったり、許可判断の基準が明確でなかったりします。兼業副業を禁止しているわけではないのでしょうけど、実質禁止というのが現状かもしれませんね。おそらく就業規則を作成する段階で、深い議論がなかったのでしょうね。

 一方で、兼業副業を推進する企業が増えてきたのも事実です。
社外人脈作り、従業員満足度向上、イノベーションといったメリットを生み出すことを目的としていますが、従業員の働き方における価値観の多様化に対応した結果だと思います。

働く側の意識

副業に関する全国1万人の意識調査として、2018年3月に株式会社インテージリサーチが行ったインターネット調査によると、1割が副業によって収入を得ており、3割は副業を行ってみたいという結果が出ています。

この数字が多いか少ないかは、読み手の意識の高さによるかもしれませんが、僕が薬学部で授業をしていても昨今の学生の働き方に対する価値観の多様化を感じますので、今後兼業副業は増えていくのではないかと想像しています。

 薬剤師の世界での兼業副業

ここまで一般的な兼業副業について語ってきましたが、薬剤師の世界ではどうでしょうか?
薬剤師においては、2ヶ所の薬局でパート勤務する「ダブルワーク」をよく耳にしますよね。日本語でいう兼業なわけですが、たしかに2つの仕事をかけもちしているとはいえ、これを兼業副業というかは微妙なところです。本来、兼業副業では、本業とは異なる職種に就くことが多いからです。というのも、企業の情報漏洩の問題がからんできます。考えてみてください。トヨタ自動車に勤める人が週末だけ日産自動車で副業するって想像できますか?普通に考えてもそれは認められないですよね。たとえ、トヨタではマーケティング部門、日産では品質管理部門に従事したとしても(かなり無茶のある例えですが)、あまり許されることではないですよね。だから働く側もそこは配慮して、機械部品の工場勤務の人が勤務時間外にUber Eatsの配達パートナーをやるといった感じで、まったく異なる業種で兼業副業を行うのが一般的です。したがって、2つの薬局で勤務することは一般論には当てはまらない現象といえるかもしれません。情報漏洩を心配するほどの機密情報は、薬局現場にはないと考えているのでしょうか?それともパートさんだから、漏洩を心配するほどの情報を得ることはないと考えているのでしょうか?なんだかしっくりきません。だって、会社の事業方針や戦略は雇用形態に関わらず、末端の従業員まで浸透してこそ意味のあるもの。また、現場レベルの創意工夫もその会社の知的財産ですから、他の薬局に知られたくないこともあるでしょう。それに、兼業副業がパートさんには認められていて(それも同業他社での!)、なぜ正社員に認められないのかも不思議です。

という問題提起の先は読者の方々にご議論いただくとして、では、薬剤師がライセンスを使わない兼業副業とはどんなものが考えられるでしょうか?もちろん薬学領域とはまったく異なる業種となると、なんでもありって話なんですが、薬学での学びや薬剤師経験を生かした例を考えてみますと・・・。

  • 医学薬学領域のコラムライター、小説家、漫画家
  • 医学薬学領域、ヘルスケア領域、薬剤師業務支援などのブログ運営
  • 英語論文の翻訳、執筆
  • レセコンなどの薬局向けシステム、患者向けアプリなどの開発モニターやプロトタイプへのデータ入力
  • 薬学部の非常勤講師、セミナー講師
  • 薬剤師向けラーニング教材開発
  • スポーツファーマシスト
  • 薬局のホームページ制作、Webマーケティング、フライヤー制作
  • 薬局の広告宣伝のためのポスティング

などがあるのではないでしょうか。実際にこれらの一部は僕も経験していますし、僕以外の薬剤師さんでもやっている方は多くいらっしゃいます。薬学領域で兼業副業をされている方々に共通するのは、非常にアクティブだということです。本業でも成果を挙げ、かつ自己研鑽にも励み、自分の強みを生かして兼業副業のチャンスを得る。そんな人たちが多いように思います。
誤解のないように言っておきますが、上記で挙げたのはあくまで薬学領域での兼業副業の一例です。必ずしも専門性を生かすことだけが兼業副業ではありません。

では次に、もっとライトな仕事を含めて、どうやって兼業副業を探したらいいか、具体的な方法についてお話したいと思います。

Part2:兼業副業の探し方、今後の行方、目的