P-Edge

薬剤師のキャリアにエッジを立たせる

【中小製薬メーカー研究会】薬学生発案イベント。近いようでいて、遠い二人の怪しい夜会。

「太田胃散、いい~薬です。」っていうCMは知ってる。
え、救心製薬って救心以外も作ってるの?
紫雲膏!?なにそれ?「紫(し)」がないと・・・(^-^;
「うちの会社の名前聞いたことがある人、手を挙げて~。」(会場シーン。。。)

 今宵、近いようでいて、遠い二人がようやく出会いました。
国内中小製薬メーカーさんと薬学生による企業研究会。
日本国内に製薬に関わる会社って、いったい何社あるのでしょうか?薬学生が知っている製薬メーカーなんて実はごくごくわずかなんです。
もっと日本の中小製薬メーカーを知りたい!
今回は、そんな想いで開催した「薬学生発案!製薬企業研究会イベント」についてご報告します。

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改めましてこんにちは、P-Edgeの富澤です。

薬学生の就職先の一つとして製薬メーカーがあると思いますが、インターンシップや就活でターゲットにするのは、ファイザーとか武田とかアステラスとか・・・大手ばかり。職種もMRがほとんどで、私立薬科大学6年制卒じゃ研究職や開発職は無理だと思っている。
でも本当にそうなのでしょうか?

ただ大手に行きたいだけ?

MRに就きたいということは、営業職をやりたいということ。「医薬品の」ということにこだわらなければ、営業職なんて世の中にいっぱいある。

医薬品の情報を伝えたいと思うなら、別にMRじゃなくても、エムスリー、メドピア、ケアネット、日経メディカル、Qlifeなど、ウェブで医薬品情報や医療情報を会員医療者に伝えるサイトを運営する会社だっていいし、出版社だっていい。

R&D(研究・開発部門)に就きたいなら、大手だけでなく中小企業はもちろんのこと、化学、食品、化粧品などのメーカーを視野に入れたっていい。

でも、学生の多くはそれをしない。そういう選択肢があることを知らないのもあるけど、結局は大手製薬メーカーに行きたいだけなのでしょう。

どうしても製薬で営業・R&Dをやりたい!医薬品情報に関わりたい!という強い気持ちがあるわけではないから、エントリーシートに何を書いていいかわからないし、選考をパスできるほどの熱意のある文章も書けないのではないでしょうか。

選択肢を広げる努力が必要

「MR全部落ちたから、MRの次に給料のいいドラッグストアを受けます。」学生さんからそんな話もよく聞きます。
どの会社を受けたのかと聞くと大手のみ。中小は受けないの?製薬の営業に就きたい気持ちはその程度なの?と首をかしげてしまいます。

「中小って、あんまりイメージがなくて。」「給料とか福利厚生とか大丈夫なんですか?」なんて返答が返ってくることもしばしば。

おいおい、世の中の99%は中小企業だぞ。

薬学生にはそれだけ中小企業のイメージがないのでしょうね。ないものは仕方がないのですが、自分の視野に映る選択肢だけではなく、まだ自分も知らない選択肢を見つけて、調べて、自己の適性を判断する努力をしなさすぎる!
「誰も教えてくれなかった」と文句を言える年齢は過ぎているんだから。

発案は一人の女子学生

「薬学生が中小製薬メーカーさんと出会える機会を作れないのでしょうか?」と投げかけてきたのは、東京薬科大学薬学部5年生の平根愛美さん。
僕が大洋製薬株式会社の本間靖明社長を取材するときに同行した彼女。本間社長へのインタビューもしてもらいましたが、その帰り道での投げかけでした。

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左:東京薬科大学平根愛美さん、右:大洋製薬本間靖明社長

「中小製薬メーカーのことを全然知らないのは私だけではなく、多くの薬学生も同じなはず。かしこまらずに近い距離感でなんでも質問できる、そんな合説ってないですかね?」と。そりゃないな、作るしかないよ。

 

ためしに、飲み仲間でもある本間社長に話を振ってみたら前向きな反応。
いっちょ一肌脱いで企画してみるかということで、8月から思案して、本間社長経由で中小製薬メーカーさん6社を集め、会場を押さえ、9月半ばにイベント告知をして、10月17日に開催。

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贅沢な研究会

参加学生は15人程度。僕が教えている城西国際大学から、発案者の東京薬科大学から、僕の知り合いの教員にも告知して東京理科大から、城西国際大学の学生のつながりで東邦大から参加してくれました。
平日の夜に、都内まで電車に乗って参加してくれる学生ですから、とても意識の高い学生さんたちばかりでした。

企業側は、開催をしてくださった大洋製薬様、救心製薬様、三宝製薬様、山崎帝國堂様、太田胃散様、大石膏盛堂様、大草薬品様の計7社も。いずれも役員クラスというそうそうたる顔ぶれ。
各社とも新卒採用を目当てに参加してくださったわけではありませんし、主催者側から謝礼をお支払いしたわけでもありません。あくまで中小製薬メーカーを薬学生さんに知ってほしいというボランタリー精神でご協力いただきました。

机の上には乗りきらないほどの試供品の数々が配られ、学生3~4人にメーカーさん1~2人が一緒に着席し、各社のプレゼン、質疑応答でとても盛り上がりました。
会場が思ってたよりも手狭でしたが、逆に密着度の高い熱気のあふれる会になりました。

皆さま、この場を借りて御礼申し上げます。

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魅力あふれる中小企業がいっぱいあるのに

日本の大学生の就職活動は、職業に就く「就職」ではなく、会社に入る「就社」だと皮肉られることがあります。もちろん「創業者のフィロソフィーに惚れた」「地元から愛されてているこの会社に入りたい」と、会社選択ありきの就活もありますが、中小企業を知らないがゆえに、勝手なイメージで大手企業を選択しがちなのも事実。

オリジナリティの高い製品を作っていたり、海外との取引に力を入れていたり、世界に誇る高い技術力を持っていたり、部署の垣根が低いから研究・開発・営業がシームレスだったり、新しいアイデアを実現しやすかったり、職場の風通しがよかったり、一人で何役もこなすことで幅広いスキルが身に付いたり・・・。大手にはない魅力が中小にはあります。

中小製薬メーカーで最近脚光を浴びている株式会社龍角散

style.nikkei.com


極端な事例かもしれませんが、大事なのはどこで働くかではないし、自分に何ができるかでもなく、自分が何をしたいか、自分は何をするべきかです。

この問いに答えるには、学生のうちは難しいかもしれませんが、中小企業を知る努力はできるはず。もっともっと視野を広げてほしいものですね。

 

さて、今回ご報告した中層製薬メーカー研究会ですが、トライアルとして開催したので次回以降も継続して開催するかどうかは現在思案中です。
なんせ、少額の参加費をいただきましたが、全然赤字なもので・・・泣
主催側の持ち出しにならない程度の収益モデルができたら開催するかもしれません。
あとは学生さんの集客ですね。中小製薬メーカーに興味を持つ学生さんに、このイベントがうまくリーチされること、中小製薬メーカーに興味を持つ学生さんを増やすこと、これらも課題です。

もし次回も企画することができましたら、このブログでもご案内したいと思います。